昨年10月、日高市は「健幸のまち」を、宣言しました。
この「健幸」という文字は、健康の「健」、健やかという字に、「幸」せという字を書く造語です。昨今、この言葉はいろいろなところで見られるようになってきました。
そこには、健康という概念を、身体的に病気がないことだけではなく、精神的な健やかさ、日々の充足感、生きがいといったものにこそ重きを置いていこうという時代の流れがあり、「ウェルネス」、「幸福度」といった概念と結びつき、GDPのような経済的な指標にかわる、新たな社会指標にしていこうという考えが、日本でも、だんだんと浸透してきている印象です。
今回、日高市としてこの「健幸」という造語を採用した背景には、全国の100あまりの市区町村が加盟する『Smart Wellness City首長研究会』の基本理念に、この幸せの文字が採用されていることが挙げられています。この研究会には、日高市長も、昨年2月に加盟されています。
私自身も、もともと健康をキーに、世界の社会課題を解決していきたいという想いで健康指導を仕事にしていました。今回の宣言や健幸社会の考え方には深く共感するところです。
一方、今回の宣言は、私のような議員や一般市民の立場からすると、唐突感があったのは事実です。日高市がSmart Wellness City首長研究会へ加盟したことも、私自身、この宣言を通じて知りました。
市内には宣言自体をまだ知らない方も多く、ましてその意図は伝わっていない部分もあるかと思います。30周年の記念すべき宣言であればこそ、検討段階での広報や市民参加が、もっとあっても良かったのではないかと感じています。
そこで、本宣言を、これからの日高のまちづくりをしていくうえでの、大切な宣言として位置付け、有効に活用しまちづくりにつなげていくために、本宣言の背景をお伺いします。
1.宣言の背景について
(1)本宣言のきっかけは。
本宣言のきっかけは、何だったのでしょうか。
近年、医学の進歩や健康意識の高まりから、「人生100年時代」とも言われ、平均寿命が延びる中、「健康」は、誰にとっても大きな関心事の一つとなっています。市の総合計画をはじめとする各種計画等においても、市民の皆さんの「健康の維持・増進」や「健康づくり」は、まちづくりの根幹をなす重要なテーマであり、その各種計画等に基づき、多くの健康関連の事業を実施してまいりました。
しかしながら、この約2年間、長引く新型コロナウイルス感染症の影響から、市が実施する各種事業は、中止や縮小を迫られ、健康関連の事業も制限を受けております。
また、市民の皆さんにとっては、外出の機会が減少するなど日々の生活が大きく変化し、「生活習慣の乱れ」や「体力の低下」、「心の健康悪化」などが懸念されています。
このようなコロナ禍において、あらためて「健康」の重要性がクローズアップされる状況下となり、また、市制施行30周年の節目に当たり、「健康」の用語に「生き生きと幸せに暮らすこと」という概念を組み合わせた「健幸」をキーワードとして、「健幸のまち」宣言を行ったものでございます。
(2)検討経緯や市民参加の状況は。
本宣言の検討経緯や、市民参加の状況をお聞かせください。
宣言策定にあたっては、市の健康増進や食育推進の計画である「はつらつ日高21」を基本的な考え方として、庁内で検討を進めました。なお、「はつらつ日高21」は、健康増進法に基づく計画で、国及び県の策定する健康増進計画に整合するものでございます。
また、議員からご説明いただいたとおり、「健幸のまち」宣言に用いた「健幸」の語は、本市も加盟しております、『Smart Wellness City首長研究会』が掲げる基本理念を表す用語であり、宣言を検討するにあたり、この基本理念も参考にしたものでございます。
宣言検討に際し、具体的には、「はつらつ日高21」が定める4つの基本方針と、市の総合計画をはじめとする各種計画等に記された「健幸のまち」実現に繋がるキーワードなどを加味し、6項目からなる「健幸のまち」宣言(案)を取りまとめたものでございます。
市民参加の状況につきましては、市民をはじめ、健康増進等の知識経験を有する方12名で構成する「健康づくり推進会議」の委員の皆さんに宣言(案)に対するご意見を伺った上、賛同を得ております。
2.宣言の意義について
本宣言に込められた市の考え、今後のまちづくりの展望についてお伺いします。
『Smart Wellness City首長研究会』は、「我が国の超高齢・人口減社会によって生じる様々な社会課題を、自治体自ら克服するため、この危機感を共有する首長が集結し、健幸をこれからのまちづくりの基本に据えた政策を連携しながら実行することにより、最新の科学技術や科学的根拠に基づく、持続可能な新しい都市モデル『Smart Wellness City』の構築を目指す」首長の集まりであるとされています
Smart Wellness City実現の要素として、①公共交通インフラの整備、②健康医療の総合的エビデンスに基づく客観評価、③健康増進インセンティブによる住民の行動変容促進、④ソーシャルキャピタルの醸成、の4つを挙げ、条例化や、指標・ツールの開発など、実現に向けたステップが示されています。
また、健康を軸に経済を回していくまちづくりの理論としては、兪炳匡(ゆうへいきょう)氏の医療経済学の考えなどは、日高の今後のまちづくりにも、大いに参考になると考えています。
このように、健康を、個人レベルの健康管理の啓発や、福祉分野の一テーマと限定するのでなく、まちづくりの根幹に位置付けるという議論が、いま全国的に活発化しているなか、日高市の今回の宣言も、日高が目指すこれからのまちづくりの一つの方針を示したと、受け止めて良いのでしょうか。
そうであれば、これから具体的に、どのようなまちづくりにつなげていこうというお考えなのでしょうか。
以上の観点から、これからの市の展望をお伺いします。
(1)目指すビジョンは
「健幸のまち」宣言は、運動を通じた健康づくりや、休養やリフレッシュによるこころの健康保持、からだのセルフチェックや健診等の受診による健康管理、そして、食を通じた元気なからだづくりなど、市民の皆さんが個々に実践する日常的な健康に関する取組を表現しています。
また、健康づくりや健康管理などは本来、各自が生活の質の向上を願い、主体的に取り組む課題です。一方、「健康」の実現は周りの環境に大きく影響されるともいわれます。このため、「人と人とのふれあい」により、地域や社会全体に健康づくりの輪を広げることや、お互いを認め合い、各自が生きがいを持って活躍できる社会の形成を目指しています。
これらの各宣言項目を、市民の皆さんが主役となり、まちぐるみで取り組んでいただくことで、「健康で、生き生きと、幸せに暮らせるまち」すなわち「健幸のまち」の形成を目指すことが、本宣言のビジョンでございます。
「健幸のまち」宣言の趣旨は、市総合計画の基本構想に掲げる「まちづくりの基本方針」の一つである「健やかに暮らし 互いを認め合い 支えあえるまちをつくる」の趣旨に合致するものでございます。すなわち、「本市が目指すこれからのまちづくりの一つの方針」を市民主体の宣言という形で示したものでございます。
ご答弁では、この宣言は「市民主体の宣言」であるとおっしゃっていましたが、この意味合いについてお伺いします。
今回の宣言は、市民参加の機会がほとんどなされないまま策定されました。ご答弁では、「健康づくり推進会議」で賛同をえたとのことですけれども、この会議は、コロナで対面での会議は開催できず、書面にて賛同を得たにとどまり、特に意見やコメントなどは寄せられなかったと聞いています。本来であれば、この会議だけでなく、少なくとも市民コメントは必要だったのではないかと考えます。
まちの宣言というものが、このように、市民が意見する機会がないままに、市だけで決まってしまうことには、大きな違和感があります。
そのような状況において、本宣言が「市民主体の宣言」というようにおっしゃっていることについて、もう少しご説明をいただけますでしょうか。
「健幸のまち」宣言では、市民の一人一人が実践すべき日常的な取組について、改めて明文化しておりますので、市民一人ひとりが主体となって取り組んでいただけることを願うという意味から、「市民主体の宣言」と申し上げたものでございます。
なお、宣言を決定する際には、市民コメントを始めとする手法がございますが、公募市民や、健康づくりに関する知識経験を持つ専門家で構成される「健康づくり推進会議」の皆様にご意見をお伺いしたものでございます。
すると、この宣言を実現していくにあたっては、市のお立場では、市民一人ひとりが主体となって取り組んでいけるようなしかけを、今後つくっていかれるということになるかと思います。
そこで、「健幸」の文字を採用した背景の一つであり、日高市長も加盟されたSmart Wellness Cityの構想について、改めてお聞きしたいと思います。
本宣言のビジョンは、この” Smart Wellness City”の考え方も背景にあるということだと理解しますが、Smart Wellness Cityの共同宣言では、健康という観点で、教育や、まちの美観、市街地整備、交通網や商店街の整備、地産地消の推進など、いわゆる健康維持、増進といった個人レベルの努力に留まらない、「持続可能な新しい都市モデル」の構築を目指すというものです。こういった考えに基づいて、今後、まちづくりを推進していこうというお考えがあるのでしょうか。
健康をキーワードとする「まちづくり」は、実現に向けて目指すべき究極的な方向性と認識しているところでございますが、議員の発言にもございました「Smart Wellness City」の実現に向けた4つの要素のうち、インフラ整備等については、短期間での具体化は難しいと考えられます。
市といたしましては、「Smart Wellness City」の実現に向けた4つの要素のうち、「健康増進インセンティブによる住民の行動変容促進」、つまり、「市民が健幸づくりに取り組むきっかけづくり」の提供から先ずは取り組んでまいりますが、「Smart Wellness City」の理念等については、引き続き、参考としてまいります。
(2)直近の具体的な取組は
市といたしましては、今後「健幸のまち」宣言を市民の皆さんに周知していくとともに、一人一人が健康づくりなどに取り組むきっかけづくりや意識の醸成、またその取り組みを継続していくための環境整備など、関連する事業を実施してまいります。
直近の具体的な取組として、毎年6月に実施している「健康まつり」をリニューアルし、「健幸のまち」宣言の趣旨に沿った取り組みを「体験」できる場の提供などにより、本宣言の周知と各自の取り組みへのきっかけづくりを図っていきます。
また、ウオーキングイベントや運動教室・スポーツ大会の開催による健康づくり事業、「こころの健康相談」、「乳幼児健診」や「特定健診」、健康教室などの検診・相談事業、そのほか各種の事業を「健幸関連事業」と位置付け、実施してまいります。そして、各事業に参加するごとに「健幸ポイント」を付与し、ある一定のポイント数に達した方に、地域商品券を贈呈するなどの「健幸ポイント事業」を実施することにより、個人の取り組みへのきっかけづくりと、まちぐるみでの「健幸」意識の醸成を図ってまいります。
加えまして、いつでもどこでも気軽にでき、健康づくりに効果があるとされる「ウオーキング」の普及啓発の一環として、ウオーキングマップの配布や、生活習慣病予防につながる、体に優しい減塩メニューや野菜たっぷりメニューのレシピをインターネットで配信するなど、健康情報を提供してまいります。
(3)健幸の評価指標は。
現行の「はつらつ日高21」では、市民アンケートの結果などに基づき、健康増進や食育推進に関する複数の目標を設定するとともに、具体的な数値目標を掲げております。
「はつらつ日高21」につきましては、再来年度が計画の最終年度となり、令和6年度からの10年間を計画期間とする新しい計画の策定に向けて検討を行ってまいりますので、その中で、「健幸のまち」宣言の趣旨に沿った評価指標の設定についても検討してまいりたいと考えております。