標題のⅡ.妊娠・出産および産後の支援についてです。
近年、核家族化により頼りにできる家族が少なく、また、男女共同参画が求められる一方で、男性の育児参加はまだ途上であり、日本では、妊娠出産における負担の大部分を、母が一人で抱える傾向がまだ多く見られます。
さらに、高齢出産が増え、妊娠中のリスクだけでなく、分娩時間も長くなることで、産後の回復に時間を要する人が増えています。
医学的には健康と診断される産後の状態であっても、産後まだ心身のバランスが回復していない時期を、一人でがんばって乗りきろうとすることで、母親は、心もからだも、ぎりぎりの危うい状態となることも少なくありません。
厚生労働省の統計では、日本では1週間に1人の子どもが、虐待死してます。一方、フィンランドでは虐待死はほぼゼロ。この違いは、社会全体で子育てする雰囲気や、制度によるものも大きいと言われています。
産前産後の期間、母親がゆったりとからだを休め、周囲から温かくサポートを受けられることは、心身の状態を早期に回復させ、親子の健全な愛着形成や、仕事へのスムーズな復帰にもつながります。
日高市は合計特殊出生率が、全国平均、埼玉県平均と比較して、かなり低い状況です。
この原因はよく見ていく必要があると考えますが、女性の妊娠出産にやさしい社会をつくることが、すなわち、次の子どもを産む元気につながるということは、間違えありません。
また赤ちゃんにとっても、幼少期の親子関係の質が、その子の長期的な社会的・心理的健康を、本質的に決定づけるといわれています。
産後のケアは甘えでも贅沢でもなく、子ども達や社会のために、「女性が受けるべきケア」であるという認識を、母親自身が持ち、そして家族、社会に広めていく必要があります。
1.産前産後の支援について
日本では、子どもや保護者、妊産婦に対し、切れ目ない支援を総合的に推進するため、令和元年12月、「成育基本法」および「母子保健法の一部を改正する法律」が施行されました。
これにより、妊産婦等が抱える悩みについて、助産師等の専門家や、子育て経験者やシニア世代などの地域住民が、相談支援を行い、家庭や地域での妊産婦の「孤立」を解消することを目的とした「産前産後サポート事業」、
そして、産後の母親の心身をケアし、親子の愛着形成を促す「産後ケア事業」の実施が、市町村に求められるようになりました。
このような、お産をとりまく母子の支援について、日高市の今後の施策をお伺いします。
(1)産前産後支援のニーズは。
産前産後支援のニーズについて、どのように把握されていますでしょうか。
本市では、妊娠された方へ母子健康手帳を配布する際は、窓口で直接お渡しすることを原則としております。この際、体調の他、疑問や不安に感じていることなどの聴き取りも行い、産前の支援について、ニーズの把握に努めているところでございます。
また、出産後は、全戸への新生児訪問を通じて、産後支援のニーズについても把握を行うなどして、状況に応じた支援を実施しているところでございます。
なお、支援のニーズといたしましては、出産に向けた様々なご質問等をいただいておりますが、内容も多岐に渡るため、ニーズには明らかな傾向といったものはございません。
一方、産後のニーズといたしましては、授乳や入浴の方法、赤ちゃんのあやし方など、赤ちゃんとの接し方に関する支援を求める声が多数寄せられている状況でございます。
(2)産前・産後サポート事業、および産後ケア事業の検討状況は。
市では、令和4年度から、産前の聴き取りや産後の全戸訪問に加えて、出産した方を対象に、「産婦健診」の費用助成を開始する予定でございます。
さらに、全戸への乳幼児訪問等を行った結果、さらなる支援が必要と判断された母子に対しましては、訪問型の「産後ケア」も開始予定であり、妊娠期から出産後まで、その時々に応じた切れ目の無い支援を提供するものでございます。
産前産後の支援について、日高市では、ご答弁にあったように、一人ひとりをフォローしていく、きめ細やかなサポートをされているということは、日高市として非常に誇れることだと感じています。
そして、事業を始めるにあたりまずは、個別訪問型の相談支援から検討されているということも理解いたしました。
一方で、そのような行政職員による個別支援には、当然限界もあるということで、国の示している産前産後サポート事業では、「地域の親同士の仲間づくり」が重視されており、そのための「集合型」の場づくりも推奨されています。
地域での仲間づくりは、「日高で子育てして良かった」と保護者達が感じるための重要な要素です。日高市でも集合型の場づくりや、地域団体との支援連携といったことは検討されているのでしょうか。
市では、ボランティアの皆様のご協力も得ながら、市内の全域におきまして、赤ちゃんサロンや赤ちゃん広場などを13か所開設し、赤ちゃんを育てるお母さん同士が交流できる場を提供するとともに、地域での仲間づくりを支援しているところでございます。
また、こういった機会が活用されるよう、チラシ等を作成して周知を図っている他、産後の全戸訪問を実施する際には、お母さんへ直接ご案内もしております。
市といたしましては、お母さんと赤ちゃんが、こういった機会を逃すことが無いよう、引き続き、周知等を図ってまいります。
赤ちゃん広場についてですが、こちらはボランティアの方々に支えられている、本当に素敵な事業だと思っております。赤ちゃん広場を楽しみに広報ひだかをチェックしているお母さん達も少なからずおられます。
ただ、赤ちゃん広場だけでは、私自身も利用させていただいていましたが、上の子がいると参加しづらかったりですとか、また開催頻度も高くはなく、お母さん同士の仲間づくりになっているかというと、現状、限定的な部分もあるのではないでしょうか。
一方で、日高市の取組として特筆できるものの一つに、週一回の健康センターでの健康相談が挙げられると思っています。ここまで毎週やっているところは、近隣でもあまりありません。
この場を通じて、自然発生的に保護者同士のつながりが生まれている状況も見受けられ、ある意味、集合型の居場所のように機能している側面があるように思います。この場を活用して、意図的に、さらなる仲間づくりの機会をつくっていくというようなことは、検討されているのでしょうか。
健康相談の内容は様々でございます。人知れず相談したいといった方もいらっしゃいますので、交流の場へ発展させづらい状況ではございますが、コロナ禍以前は、乳幼児健診の終了後に、お母さん同士が自発的に交流する状況などもございました。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう現状におきましては、参加者の滞在時間が最短となるよう最大限配慮しているところではございますが、さらなる交流の場の提供につきましては、感染状況を見極めながら検討するものでございます。
それでは、現在検討されている訪問型の産後ケアについてお伺いします。
これは国の「母子保健対策総合支援事業実施要綱」に基づき実施するものと理解しています。この要綱では、事業の実施主体である市町村に対し、利用者からの利用料の徴収が求められています。
つまり、産後ケアにかかる費用のうち、一部を利用者の自己負担とするということですけれども、この自己負担の程度は、各市町村の裁量に任されています。
「切れ目の無い支援」を提供していくという観点で、全戸訪問以降の産婦のセーフティネットとして、この産後ケアを機能させていくということだと思いますが、まだ産後ケアを受けるということが一般的でないなかで、産後ケアは甘えだとか贅沢だというような認識が、日本ではまだまだ根強くあります。このような状況においては、産婦が支援が欲しいと感じたときに、経済的に余裕のない子育て世帯であっても、気軽に利用できる金額でないと、セーフティネットにはなりづらいと思います。
実際、先行自治体の実績を見てみましても、原因はもちろん様々だとは思いますが、利用率が思うほどに伸びない自治体が多くなっています。
新しい事業でもありますし、産後ケアとはどういうものかといった認知を広げていくためにも、産婦が支援を必要としたときに、一度は、無料またはワンコインなど、かなりの安価で利用できると良いと思いますが、そういった配慮や工夫はしていかれませんでしょうか。
たとえば、初回限定のクーポンを配布するなどといったことは、大変喜ばれるかと思いますが、今後検討できませんでしょうか。
産後ケア事業は、一層の支援が必要な母子に限って提供する事業でございますので、保険診療における自己負担割合と同等の3割について、利用者にご負担をお願いしたいと考えております。
また、市民税非課税世帯の負担を軽減するなど、利用者の経済状況等については適切に配慮してまいりますが、事業の開始前でございますので、クーポン券の配布につきましては、事業を展開する中で、利用者の声や近隣市の状況など、情報を把握してまいります。
事業を展開する中で、情報を把握していかれるとのことですが、では、本事業は何を成果指標としていかれるのでしょうか。お考えをお伺いします。
来年度から開始する予定の産後ケア事業につきましては、支援の件数がどの程度に至るのか未知数でございますが、悩みを抱えた母子にこの事業を提供することにより、母と子が健やかに暮らせること、そして、乳幼児虐待等のリスクを低減することを目的として実施するものでございます。
指標でございますが、短期的には、利用件数の推移を見守るとともに、これを増加することができるよう、制度の周知等に努めてまいります。
2.赤ちゃんを亡くした家族へのケアについて
流産の頻度は、厚生労働省の調べによると平均で約15%といわれ、40歳以上の妊娠では、約半数が流産するといわれています。妊娠経験のある女性のうち、約40%が、流産を経験しているという事実があります。
半数近くの女性が、赤ちゃんの喪失を経験しているにも関わらず、従来、日本では、流産や死産、新生児死亡といった事柄は、忌み隠すものとして社会的にタブー視されてきた風潮があります。
流産したということなどは人に話すものではない、という空気感があり、実際、母子保健の制度も、正常に妊娠して出産されることを前提に整備されてきており、赤ちゃんを亡くした母親や家族は、心身に大きなストレスと深い悲しみを抱え、社会的な孤立に至りやすい状況にあります。
実際、日高市のHPで「流産」で検索しても、情報は出てこない状況です。
こうした中、赤ちゃんの喪失を経験した母親を「天使ママ」と表現し、天使ママ同士が助け合う自助グループが、全国で立ち上がっています。
サポート団体である「iKizuku」による働く天使ママ実態調査アンケートでは、「ペリネイタルロス」、すなわち、流産、死産、新生児死亡、人工妊娠中絶など、お産をとりまく赤ちゃんの喪失による心身への影響について、90%の母親が「精神的な影響があった」と回答し、そのうち23.6%もの母親が、「通院や薬の処方に至った」という結果も出ています。
「生活環境ストレッサー」に関する文科省の調べでは、ライフイベントのうち、最大のストレス因子になるものは、「子どもの死亡」であるという結果が出ています。子どもを亡くすことほど苦しいことはないというこの結果は、私たちの感覚とも合うのではないでしょうか。
特に昨今では、妊娠検査薬が身近になり、早期発見が可能になったことや、エコー技術の進歩などにより、赤ちゃんへの愛着を、妊娠のかなり初期の段階から持つようになってきています。
そういった母親の感覚が理解されず、従来的な感覚をもった医療従事者や行政職員の対応、周囲や職場での対応等により、二次的な傷つきも発生しています。
このような実態調査や、当事者による「私たちの悲しみ、苦しさを理解してほしい。公的な支援制度を整えてほしい」といった要望等を受け、昨年5月、厚生労働省により「流産や死産を経験した女性等への心理社会的支援」の整備を求める通知が発出されました。
ペリネイタルロスを経験した女性が、悲しみと向き合い、必要な休息や支援が得られる環境を整備することは、少子化対策や女性の社会参画を進めるうえでも、重要なものであるという認識を広めていく必要があります。
ペリネイタルロスは、タブーではなく、誰にでも起こりうることとして、誰もが受け入れ、支え合える地域をつくっていくために、日高市としての今後の対応をお伺いします。
(1)ペリネイタルロスのケア(周産期グリーフケア)について
そのニーズをどのように把握されていますでしょうか。
流産や死産などを経験された方のケアに関するニーズの把握は、大変に繊細な内容を含んでおりますので、保健師による相談対応などの機会を通じ、慎重に行っております。
なお、死産や流産を経験されたことをお話しされる方はそれほど多くはないものの、流産などの辛い経験を話すことで、「気持ちが少し楽になった」といったご意見を頂戴することもございますので、引き続き、当事者のお気持ちに寄り添ってまいります。
(2)相談窓口とその対応内容は
当事者へのアンケート調査によると、「助けを求めてもよいことすら知らなかった」 という声が多数がっています。相談を受け付けて、部署を越えた連携をしながら、包括的に対応できる窓口が必要と考えますが、保健センターがその窓口機能を果たされているのでしょうか。また、どのような対応がなされているのでしょうか。
現在のところ、個別の相談窓口を設置していませんが、各種相談の中でお話を伺っております。今後、他の部署と連携しながら、保健相談センターを相談窓口とするよう、検討してまいります。
(3)情報提供体制の整備は
当事者が必要なときに、必要な支援の情報が手に入るよう情報提供をしてく必要があります。
例えば、市のHPに、赤ちゃんをなくした家族向けのページを作成し、相談窓口の情報はもちろん、受けられる公的支援や、産後休暇の取得について、また自助グループの情報などが、掲載されていると良いかと思います。
また、相談窓口についての情報を、母子手帳に記載したり、情報リーフレットを作成し、母子手帳を交付する際や、死産・死亡の届出窓口、医療機関等で渡したりなど、事前事後での情報提供が必要と考えますが、いかがでしょうか。
市ホームページにおきまして、新たに、赤ちゃんをなくされた方の支援に関するページを新設するとともに、母子健康手帳をお渡しする際など、支援を求める方の立場に立って対応できるよう、情報の収集等に努めてまいります。
また、当事者の方々の「ぺリネイタルロスをタブー視すべきではない」と言ったご意見も踏まえまして、対応してまいります。
(4)希望者への訪問相談は
日高市は産後の全戸訪問を行っています。これに加え、赤ちゃんを亡くした家庭にも、希望があれば専門家が訪問できることが望ましいと思いますが、いかがでしょうか。
本市では、新生児訪問やこころの健康相談などにより、随時、産後支援を行い、また、支援の内容に応じて、保健師、助産師もしくは精神保健福祉士が訪問又は来所による対応をしております。
なお、この産後支援の対象者には、産後に心身の不調を抱える流産や死産を経験した方も含まれておりますので、希望に応じ、訪問相談を実施いたします。
(5)自助グループなどの地域ボランティアとの連携は
行政窓口よりも当事者同士の方が、話がしやすく気持ちが軽くなるという声も多くあります。地域の自助グループと連携し、市から当事者に対し、自助グループの活動を案内したり、市の対応について意見交換をしたりできると良いと考えますが、いかがでしょうか。
ご意見をお聞きする重要な機会でございますので、地域ボランティアの皆様との意見交換の場を設けるなどして、対応してまいりたいと思います。
(6)担当職員への課題共有や研修は
日高市内でも、赤ちゃんをなくしたご家族から、保健師や窓口職員との会話において、深く傷ついたという声が寄せられています。
改めて、関連する窓口職員や助産師等専門職員の方々には、ペリネイタルロスへの理解を深めていただきたいと思いますけれども、対策はされていかれますでしょうか。
近年は、赤ちゃんをなくされた方の支援に関する研修が、随時、開催されるようになりましたが、議員から頂戴した意見を踏まえまして、改めて、研修に参加した職員が、他の職員への職場内研修を実施するなどして、情報の共有化を図ってまいりたいと考えております。
さらに、市内部の組織間でも情報共有化が図られるよう、関連部署への研修資料の提供等についても、随時、実施してまいりたいと考えております。
(7)関係部署や外部の関係機関との連携は
市内の当事者の方から、死亡届を出したにも関わらず、 母子保健関連の連絡が来た、という声も届いています。戸籍課との情報共有はなされているのでしょうか。
また、流産・死産の場合には、本人同意の上、医療機関から市に共有するといった連携はできているのでしょうか。
令和3年5月31 日付けで厚生労働省から通知のあった「流産や死産を経験した女性等への心理社会的支援等について」の事務連絡におきまして、地方自治体に対し、死産届に関する情報共有を図ることや、流産や死産を経験した女性等に対する心理社会的な支援が適切に行われることなどが改めて依頼されておりますので、ご本人からの同意が前提と考えますが、市内部の組織間や、外部関係機関との連携につきましては、柔軟に対応する必要があるものと認識しております。