日高市は、その面積の24%を森林が占める自然豊かな市です。
森林の持つ機能は、水源の確保、土砂災害の防止、生物多様性の保全、CO2の吸収などによる地球環境の保全、気候や騒音の緩和などの生活環境の保全、レクリエーション、自然教育、木材の生産、など多岐にわたり、その恩恵を将来にわたりつないでいく必要があることは、言うまでもありません。
現状、森林の管理・保全は、その所有者の責任で行うものとなっています。市内の森林の約98%は民有地となっており、地権者の方が管理されています。
日高市も、市所有の日和田山や高指山の一部を、ふるさとの森に指定し管理するなど、森林保全に取り組んでいるところです。
近年、森林の乱開発で大きな問題になっているのがメガソーラー開発の問題です。森林におけるメガソーラー開発による生態系の破壊や環境汚染、土砂災害などの問題が、全国で、後を絶たない状況です。
日高市は、2019年、「日高市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」を制定し、メガソーラーの開発に対し、保護区における規制要件や、全市における開発要件を定めました。国による実効的な法規制がないなか、日高市が全国に先駆けて、本条例によって保護区の実質的な開発規制に踏み切ったことで、同様の条例を制定する自治体が相次いでいます。
これは、まさに地方自治のあるべき姿であり、日本社会に対する日高市の貢献はとても大きく、市民として大変誇らしく思っておりますと同時に、大変な条例の制定に尽力くださった市の皆様に、深く感謝しているところです。
一方で、このような森林の開発が起きてしまう根本的な原因は、山林所有者の方々の苦しい状況にあります。林地を相続するも、林業を営むことは難しく、相続税や固定資産税、間伐費用など、所有しているだけでかなりの費用を負担する必要があります。
土地を手放したくても、林業経営に適した場所でなければ、林業者には売れず、寄付でさえ受け取ってもらえる先もなかなかありません。そこで、かつてはゴルフ場や廃棄物処理場に変わっていき、いまはメガソーラーになっている、というように、森林の伐採につながる事業者にしか売れないという現実があります。
すなわち、長期的に見れば、メガソーラーなど特定の事業を規制するだけではいたちごっこであり、困っている山林所有者の支援措置が、本質的には重要です。
国も、このような状況に対し、2018年に「森林経営管理法」を制定し、手入れの行き届いていない森林について、市町村が森林所有者から経営管理の委託を受け、林業経営に適した森林は、地域の林業経営者に再委託をし、また林業経営に適さない森林は、市町村が公的に管理できるようになりました。
本来であれば、先に述べました「日高市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」で地権者の権利を制限すると同時に、このような、森林保有に苦慮している所有者の方々を支援する制度を、市として提示できると良かったというように思います。
とはいえ、それが難しかった事情も理解できますので、いま、改めて、日高市での、この「森林経営制度」の早期の導入が望まれるところです。
その財源は、というところで、国は、森林保全に必要な地方財源を安定的に確保するために、2019年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」を制定し、「森林環境税」及び「森林環境譲与税」を創設しました。
「森林環境税」とは、2024年度から国税として1人年額1,000円が徴収されるというものです。そうして集めた国税を、各自治体に、森林面積や人口などに応じて「森林環境譲与税」として配分されるというもので、この「森林環境譲与税」は既に、森林環境税の徴収に先行して2019年から自治体への譲与が始まっています。
この財源を活用し、地域の実態に即した森林保全を行っていくこと、すなわち、山林の実態や所有者の状況を把握しながら、地域の林業に関わるプレイヤーと連携し、現実的に森林機能を確保していく仕組みを整えていくことが、自治体の大きな役割となったわけです。
この状況を受け、日高市は、昨年度、「森林環境譲与税の活用に向けた基本方針」を策定し、これに基づき今年度より、単年度の実施計画を作成し事業を始めたところです。
しかしながら、日高市に入る森林環境譲与税は、現状年間約800万円、令和6年度以降は1千万円程度の見込みとなっており、日高市の山々を管理していくために、とても十分な金額とは言えません。
一方で、都市部の市町は、森林は少ないものの人口が多いために配分される譲与税が多くなっており、このような財源的に余裕のある都市部市町との広域連携も必要と考えます。
先行事例も少ないなか、手探りの状況でもあるかと思いますが、いま現時点で見えている現状と課題、今後の展望をお聞きします。
1.現状の課題について
(1)森林保全における目指す姿は。
森林は、木材等の林産物の供給、洪水や土砂流出及び崩壊を防ぐなどの保全に役立つとともに、水源の涵養や大気の浄化、生活環境の保全など様々な役割を果たしております。近年では、地球温暖化対策の取組においても、二酸化炭素の吸収、炭素の固定等、森林の在り方が特に重視されております。
日高市には1,119ヘクタールの森林が存在し、その種別は、スギ、ヒノキ等の針葉樹が主なものとなり、その他は、クヌギ、コナラ等の広葉樹でございます。本市の総面積の約24%を森林が占めております。
高麗地域においては、河川、湧水地、渓流等の周辺に森林が多く存在しており、水源を蓄え、育み、守るといった水源涵養機能が高い森林であるため、その維持増進を図る必要があります。
また、日和田山、高指山周辺の森林は、自然とのふれあいの場として訪れるハイカーも多く、レクリエーション機能のある親しみやすい森林として、維持する必要があります。
そして、本市の平地部の山林においては、風や騒音等の防備や大気の浄化のために有効であるとともに、快適な生活環境を整備していく上で、適切な管理を推進していく必要があります。
市では、このような森林の多様な機能を持続的に発揮させることが重要であると考えております。今後も、森林を構成している樹木や森林内の土壌、生息する多様な生物等が健全な状態で保持されている姿を目指すものでございます。
「森林保全は、地球温暖化対策の取組として特に重視されてきている」、とのご答弁がありました。
日高市は清流文化都市として、これまでも自然環境の保全に力は入れてきているとは受け止めておりますが、森林保全については、なかなか市の人員をさけていない、専従の職員が一人もいないという状況で、なかなか手をつけられていない現状があると思います。
しかしゼロカーボン宣言もなされた今、従来よりも、市として森林保全に力を入れるべき状況になっているという認識をお持ちということでしょうか。
議員ご指摘のとおり、本市は豊かな自然を誇り、日和田山、高指山をふるさとの森への指定や巾着田、高麗川の環境維持事業などに取組んでおります。
そして、近年は、温室効果ガス排出削減や災害防止を図る観点からも、全国的に森林の役割が重要視されております。
本市においても、森林環境譲与税が創設された主旨を捉え、より積極的に施策を展開していく必要があると考えております。
いまある森林を将来的にどう保全していくかと考えるうえで、①基本的には人の手を入れずに自然に任せる自然林として森を自律させていくという考えと、②人工林として手を入れて森林経営をしていくという考えとがあるかと思います。場所によっても、正解が異なってくると思いますが、このあたりはどう整理されていかれるのでしょうか。
まずは「森林の実情把握」をしていくとのことですが、具体的にはどのような取組を考えられていますでしょうか。
(2)実現に向けた課題は。
森林保全を適切に推進していくためには、先ほど、お答えいたしました、本市の目指す森林の在り方を実現するため、森林の整備に関する計画が必要と考えております。地域における森林の実情を把握し、必要とされる整備等を的確に捉えること、また、優先順位や工程等を定め、計画的に各種施業を実施していくことが重要であると考えております。
(3)所有者の状況把握は。
森林の整備、保全及び活用を進めていくためには、山林所有者の林業や山林に対する意向などを把握することが必要と考えております。今後、市が整備する林地台帳を基に、山林所有者の意向把握に努めてまいります。
どういった観点での調査をされるのでしょうか。所有者さんに分かりやすいように、具体的なご答弁をお願いします。
意向調査の内容につきましては、山林所有者に対して、所有する山林を今後、どのようにしていきたいのかを確認したいと考えております。
間伐、植樹及び伐採した木材を販売するなどの林業経営を自主的に行っていく意思や山林の管理を市へ委託し、自然林、人工林として森林環境を整備してほしいなどの意向、また、林道の必要性及び整備に関することなど、森林を整備していく上での問題点や希望の有無などについて、調査してまいります。
2.森林環境譲与税の活用について
(1)特に注力していく施策とその進捗は。
市では、森林環境譲与税の使途に関する施策を明確にするため、令和3年度に森林環境譲与税の活用に向けた基本方針を策定いたしました。この基本方針に基づき、適切な森林整備と間伐材などの木材利用を促進していくとともに、森林整備に必須となる林業事業体への支援、林業の担い手となる従事者の育成に努めてまいりたいと考えております。
また、施策を展開するにあたり、基本方針に基づく実施計画書を作成しており、当該年度における実施業務を定めております。
令和4年度においては、林道関ノ入線の景観整備や市内の木材を利用したベンチを作成し公共施設へ設置するなどの事業を実施いたしました。
なお、実施計画書は、各種事業の詳細や事業費を掲載し、年度当初に公表するとともに、事業実施後においては、事業実績を当該実施計画書に掲載し、同じく公表しております。
今後の施策につきましても、適切な運用が行えるよう努めてまいります。
日高市第六次総合計画では、林業振興について書かれている具体的な施策は、間伐等となっており、成果指標も「間伐面積」となっています。
しかし、市が直接間伐していくとなると、永久に定常的なコストがかかってしまいます。
それよりも、自然林に戻すか、または民間が自立的に森林経営をする状況をつくっていくことの方が、市として注力すべき施策と考えます。
森林経営を可能にする第一条件は、林道の存在です。林道がないと、木材の搬出は困難であり、経営は成り立ちません。
逆に、林道をつくれば、いま、地方へ移住して自伐型林業を志す若い世代も出てきているなかで、民間の力で管理が行われていくように誘導することもできるのではないでしょうか。
実際、林道がある山林であれば、購入して林業を営みたい、という市内の林業従事者の方からのご相談もいただいています。
市として、まずは林道の整備を中心に、林業経営のできる環境づくりに注力していくことが、持続可能な森林保全につながると考えますが、いかがでしょうか。
(2)森林経営制度の導入に向けた準備状況と課題は。
森林経営管理制度を導入及び運用していくためには、森林所有者、林業経営者及び市のそれぞれの役割が重要となります。
市では、森林経営管理制度を円滑に進められる体制を構築していくとともに、今後予定しております山林所有者の意向調査の結果を基に、森林の経営管理を基本とする林業と森林の適切な管理の両立が図れるよう努めてまいります。
本制度の導入に向けては、体制構築と山林所有者への意向調査をしていくとのご答弁でした。これから、先ほどお答えいただいたような意向調査をして、多くの山林所有者が「制度の利用を望んでいる」という結果が得られたとして、ではすぐに本制度を導入できるかというと、難しいというように理解しています。
導入に向けて、具体的にはどのようなハードルがあるのでしょうか。
議員ご指摘のとおり、森林経営管理制度は市町村が仲介役となり、森林所有者と担い手を繋ぐ仕組みを構築するものでございます。本制度では、森林環境によって、林業経営に適した森林は、林業経営者等へ委託することとなります。そして、林業経営に適さない森林は、市が管理していくこととなります。
森林経営の集約化や担い手の確保のほか、森林経営に適した環境づくりや森林整備に必要な財源の確保が本制度を運用する上での課題であると考えております。
担い手の確保についてお聞きします。
現状、市内の林業に関わるプレイヤーは、どのような方が、どのくらいいるのか、把握はされているのでしょうか。
令和2年国勢調査における市内の林業従事者は3人です。
森林経営管理制度を運用する森林組合や林業会社等、森林技術者を雇用して森林事業を行う林業事業体が必要となります。そのため、市内の林業経営者及び林業従事者の詳細把握に努めてまいります。
そういったプレイヤーを詳細に把握したうえで、実現可能な体制や枠組みを、協働でつくっていかれるということでしょうか。
了解しました。あと、そのプレイヤーという意味では、林業経営者や林業従事者だけでなく、市内では間伐ボランティアをはじめ、山林保全に関わるボランティア団体が活動しています。
こういった、山林に関わる様々な団体と、情報交換、連携を進めていくことも、民間の力の活用、また新たな担い手の発掘につながると考えますが、いかがでしょうか。
(3)広域での連携は。
「ゼロカーボンシティ共同宣言」を表明したダイア5市の中で、日高市は2番目に森林面積を有しており、森林が二酸化炭素の吸収や貯蔵など、大きな役割を果たしていることから、地球温暖化防止対策に貢献できるものと考えております。
しかしながら、森林整備に関する施策を実施していくために必要となる財源につきましては、配分される森林環境譲与税だけでは不十分な状況でございます。現状の制度では、私有林及び人工林面積、林業従事者数及び人口により譲与額が算出されることから、人口が少ない市町村にとりましては、交付額が少なく、本譲与税のみで森林整備に関する事業を実施することは、大変、困難なものとなっております。
このことから、今後、ダイア5市や森林面積の少ない都市部の市町と協定締結等の連携などを含め、公益的な森林整備が実施できるよう努めてまいります。
「ダイア(つまり、所沢、入間、狭山、飯能)や森林面積の少ない都市部の市町と協定締結等の連携など」に努めていくとのご答弁がありました。
具体的にはどのようなことが検討されているのでしょうか。
埼玉県では、県内の都市部市町と山側市町村が森林環境譲与税を活用し、相互連携による森林整備や木材利用等の取組を支援する制度がございます。近年では、都市部市町が山側市町村の森林において、間伐や林道などの整備を行い、地球温暖化対策に取組んでおります。
本市は山側市町村として、都市部市町と連携した取組が行えるよう努めてまいります。
地球温暖化対策の意味合いにおいては、ダイヤ5市で、日高市は森林によるCO2の吸収・貯留を担っているというご答弁もありました。
来年度、ゼロカーボンに向けた「脱炭素ロードマップ」を作成される予定がありますが、それにあたっては、5市共同でゼロカーボンを目指す、ということは、都市部市町の排出した分を、山側市町で吸収するといった、5市全体でどういう状態を目指すか、という考えも、前提にして作る必要があると思います。
どのようにして都市部市町と話をしていくことを考えているのでしょうか。
議員ご指摘のとおり、5市と共同してゼロカーボンを目指すにあたり、それぞれの役割を確認及び研究してまいります。また、今後は、市が実施すべきことを計画的に取組み、その上で、関係市と連携してまいります。