1.里親の現状と課題について
里親制度とは、保護者の病気、家出、離婚、そのほかいろいろな事情により家庭で暮らせない子どもたちを、自分の家庭に迎え入れて養育する仕組みです。
日本では、そういった子どもはまず、乳児院や児童養護施設といった施設に行くイメージが強くありますが、国連は、原則として里親に養育されるべきとしており、施設の利用は条件を限定するよう各国に求めています。
小さな子には、特定の大人との愛着形成が必要です。しかし、施設では、集団生活になり、かつどうしても職員の入れ替わりがあるため、それが難しいという現実があるからです。
愛着障害のまま成長すると、自分に自信を持ちづらく、就職ができない、自傷的な行為や反社会的な行動をとるなどのリスクが高くなるといわれています。
子どもの権利条約では、すべての子どもは「家庭環境の下で、幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長」する権利があるとされています。
一方、日本の状況はというと、先進諸国の中でも、施設に入る子どもの割合が圧倒的に多く、里親への委託率が令和元年で21.5%と極めて低い状況です。
国連子どもの権利委員会は、日本のこの施設偏重の傾向が問題であると政府に勧告し、これを受けて日本では、2016年に児童福祉法を改正。施設より家庭での養育を優先させることが明記されました。そして2017年、政府は「新しい社会的養育ビジョン」を策定し、里親等委託率を令和5年までに75%にすると、極めて意欲的な目標を掲げました。
目標を達成するためには、まず何よりも受け入れ先である登録里親の数が必要です。
日高市は、市内の乳児院や児童養護施設と密に連携しながら、啓発活動を積極的に進めてきており、現状の里親登録数は4組と、近隣市と比して少なくはありません。
しかし、国や県の目標達成に向けてはまだまだ遠く及ばず、地域で協力しながら今後さらに力を入れていかないと、達成はまったく見えてこない状況です。
日高市を管轄する川越児童相談所や市内の養護施設からは、地域の施設がほぼ満床で里親も足りないため、子どもを措置した場合、地域と離れたくない場合でも、遠方の施設に入所せざるを得ない場合が多い、また、緊急度が低い子どもを措置できていない、つまり、虐待の予防的な保護が行えていないという状況も聞いています。
このような状況を踏まえ、市の課題認識をお聞きします。
(1)里親に対するニーズは。
里親に対するニーズについて、どのように認識されていますでしょうか。
里親制度は、保護者の病気や虐待など何らかの事情により家庭での養育が困難な子どもを家族の一員として迎え入れ、温かい愛情と家庭的な環境で育てていくために児童福祉法に定められた制度で、埼玉県が主体となり、当市は川越児童相談所の所管となっております。
子どもが健やかに成長するためには、安定した家庭環境の中で、保護者の温かい愛情の下に育てられることが必要です。しかし、児童養育の相談件数は年々増加傾向にあり、特に児童虐待に関する相談が多くなっております。
家庭で養育できない子どもを児童相談所で保護するケースでは、短期間から長期間に及ぶケースまで様々です。現在、国内で約4万5千人いる自分の家庭で生活できない子どものうち、里親家庭で生活している子どもの割合は20パーセント程度となっており、他の先進国では80パーセントを超える国がある一方で低い水準となっております。
また、市といたしましても、里親登録数が少ない現状があり、里親登録数を増やしていくことが課題であると認識しております。
(2)市内の里親委託の現状と課題は。
(2)市内の里親委託の現状を踏まえ、どのように課題を捉えていますでしょうか。
市内の里親登録数は4組でそのうち、実際に子どもを受け入れている里親は1組となっております。
里親登録数を増やしていくためには、里親制度の周知が課題でございます。
里親制度は、特別養子縁組制度と混同されがちですが、養子縁組する里親だけでなく、養育里親としての里親、季節・週末のみの里親など、短期間のみ受け入れる里親の方も多くいらっしゃいます。
また、里親登録に当たり、「熱意を持って養育に携わることができる」、「生活に困窮していない」などの規定はございますが、特別な資格は必要ありません。さらに、里親には里親手当のほか、生活費や医療費、教育費などが支払われます。こうした里親に対する理解をさらに広げていく必要があると考えております。
2.普及啓発の取組みについて
日本において里親制度が普及しない理由については様々な要因が指摘されていますが、制度について知られていない、つまり、養子縁組のイメージが先行し、多くの一般家庭ではそもそも選択肢にすら上がっていない現状があると考えられます。
「里親」と一言で言っても様々な形態があること、数日からといった短期の養育里親のニーズも多いことを周知したり、埼玉県子育て短期支援事業、通称ショートステイ等の預け先として募集するなど、里親登録へのハードルを下げる工夫が必要ではないでしょうか。
また、ファミリーサポートの協力会員や子育て関連のボランティア団体など、子どもの養育に興味のありそうな方々に直接情報提供することも効果的と考えます。
そこで、市の具体的な施策をお聞きします。
(1)里親登録を増やすための方策は。
里親登録を増やすための方策は、どのように考えられていますでしょうか。
里親支援専門相談員は、児童相談所の里親担当と連携し、里親の新規開拓から里親委託された後の子どものサポートまで幅広く活動されております。
本市では、市内に児童養護施設があるため、里親支援専門相談員がいる利点を生かして里親制度の周知に努めており、市民まつりでの啓発活動を毎年行っておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により2年続けて市民まつりが中止となったため、今年は10月の里親月間に合わせて市役所ロビーにおいて、啓発パネルの展示を行いました。
また、地域の方々に理解を深めていただくため、里親支援専門相談員とともに10月に開催された民生委員定例会において、里親制度のPRをさせていただきました。
引き続き、里親に対する社会の理解が深まり、多くの方に制度を理解していただけるよう、広報やホームページなどの媒体を活用した周知のみならず、10月の里親月間を中心に様々な場において継続的な周知に努めていきたいと考えております。
(2)短期の養育里親について啓発していく考えは。
里親登録へのハードルを下げる方法として、短期の養育里親について啓発していく考えはありますでしょうか。
里親として子どもを迎え入れるまでには、児童相談所への事前相談、数日間の研修や家庭訪問を経て里親として登録されたのち、子どもとの面会、外出や宿泊などの交流を重ねるほか、児童相談所や里親支援専門相談員による相談支援体制も確立されておりますが、里親として子どもを迎え入れるに当たっては不安もあることと認識しております。
子どもたちの年齢や特性、状況は様々ですので、里親になられた方の中には、ひとり親家庭の保護者が入院などで養育者が不在となる間など、数日、数週間、数か月と1年未満の短期の養育里親や、季節や週末のみ受け入れ、家庭引き取りとなるまで交流を継続していく季節里親や週末里親から始めることで少しずつ不安を取り除いている方も多いようです。
いずれにしましても、季節・週末里親、短期の養育里親についての認知度が低く、まだまだ周知が足りないと感じております。
今後は、地域での子育てに関心のある子育て関連のボランティア団体やファミリーサポートセンター協力会員向けの講習会などの機会を利用して、養子縁組里親だけでなく、養育里親にもスポットを当てて周知していくことが重要だと考えております。
少しでも里親に興味を持っていただける方が増え、里親として1組でも多くの方が登録していただけるよう、児童相談所や里親支援専門相談員と連携して周知に努めていきたいと考えております。