気候変動による自然災害の増加、先行き不明な国際情勢、日本経済の低迷や円安の進行などの社会変化を受け、いま、食糧自給率の向上や、輸入の肥料や農薬に頼らない食料生産が、課題としてさらに顕在化してきています。
日高市は、都市と農村の中間的な色あいを持つまちであり、埼玉県の雛形のように言われることもある小さな市です。そんな日高市だからこそ、危機に強く環境にやさしい、これからの時代の豊かな地域循環共生のモデルを率先して実現し、社会に示していける可能性に満ちているまちであると考えております。
本日は、それに向かうための切り口の一つとして、学校給食を起点にした農業振興をテーマに質問いたします。
いま、地域における農業振興策として、学校給食との連携が全国的に注目されおり、国も積極的な支援を始めています。
先行事例としては、愛媛県今治市、そして千葉県いすみ市などが有名です。市が、市内の農家やJAなどの関係団体と連携して、学校給食での買い取りを保障することで、農家の方々は安心して作付けができる、また、市内の子ども達に食べてもらえるということがやりがいにもつながる、そしてまた、子ども達の食育や環境保全につなげていく、という地域ぐるみ取り組みで、書籍や映画にもなり、全国に同様の事例が生まれ始めています。
安心安全な給食の提供と、持続可能な農業の推進について、市の展望と今後の具体的な取組をお伺します。
標題1.学校給食について
1番.食材調達について
(1)給食費の値上げにより期待される点は。
学校給食法により、学校給食の提供にかかる費用のうち、材料費、つまり米や野菜や調味料といった、食材にかかるお金は、保護者が負担するものとされており、日高市でも学校給食費として徴収されています。
この学校給食費の金額が、日高市では令和5年度より、小中学校ともに月500円増額されることになりました。これにより、給食の内容にどのような変化が期待されますでしょうか。
平成20年12月に学校給食費を改定して以降、消費税率の改定や食材価格が上昇するなか、献立の工夫や物資選定による食材料費の抑制などにより、これまで給食費を据え置いたまま提供を続けてきました。
令和5年4月からの改定により期待される点は、これらのことが解消される他、児童生徒の1人1回あたりの平均所要栄養量を定めた「学校給食実施基準」に柔軟に対応しやすくなる点と、副食について1品増やすことで、より栄養バランスのとれた給食の提供が可能となる点でございます。
(2)小麦や牛乳の価格高騰による影響と対策は。
昨今の小麦や牛乳の価格高騰による影響と対策について、どのように考えられていますでしょうか。
事業者と年間契約を締結していることから、現在のところ年度中での価格高騰の影響は受けておりません。
来年度以降についてはいかがでしょうか。
市による食材費の補助はしないとのご答弁でしたが、今後、価格高騰が続く場合には、どのように対応していかれるのでしょうか。
小麦や牛乳につきましては、来年度、価格上昇が見込まれ、どの程度上昇するかは不透明ですが改定する給食費の中で対応したいと考えております。
(3)食材料費に対する市の考えは。
長期的な物価の変動が予想されておりますが、学校給食費を値上げしたばかりの状況において、しばらくはこれ以上の保護者負担の増加は難しいと考えます。
全国では、コロナ禍や物価の高騰を受け、給食費の全部または一部を無償化する自治体も増えている様です。
子ども達の食のセーフティネットとして、これからも栄養豊富で安心安全な学校給食を提供していくために、必要に応じて食材料費を市が補助していく考えはありますでしょうか。
学校給食法において、給食で使う食材にかかる費用は受益者負担と規定されていることから、現在のところ市から食材料費を補填する考えはございません。今後も給食費として適正な金額を定めてまいりたいと考えております。
給食費の中で対応するとのことですが、今後、パンや麺類などの発注において、価格の面や、また、食材の安定供給、より安全な食材選定といった観点で、国産小麦の使用を増やしていくといったことは考えられますか。
パンや麺類などの主食につきましては、公益財団法人埼玉県学校給食会を通して購入しており、多くのパンや麺で輸入小麦粉と県産小麦粉を配合しています。
現在、学校給食会では、食材の安定的な供給の観点から、パンにおける国産小麦粉の配合率を増やすことを研究しています。
では牛乳についてですが、酪農にかかる飼料の価格が高騰している中、それ相応の価格で買い取る必要もあるかと思いますし、今後さらに価格が高騰する可能性もある中で、毎食必ず牛乳と決める必要はないのではないでしょうか。
例えば、月に一度はお茶の日をつくるなどして、和食における伝統的なカルシウムの摂取方法を体感するといった食育にもつなげていくことなどは、考えられますでしょうか。
牛乳につきましては、児童生徒の発育に欠くことのできない良質のたんぱく質やカルシウムの供給源として、学校給食摂取基準に定める必要な栄養量を摂取するために、毎食提供することを基本としています。
こうした中でのお茶の提供については、和食献立や地元狭山茶への理解を深めるといった食育の観点から検討したいと考えております。
2番.安心安全な給食の推進について
(1) 食材選定基準を策定し公開することについての考えは。
2019年での一般質問でも申し上げた通り、日高市は、味噌や醤油などの調味料は天然醸造のものを使い、週4日の米飯や、無添加の加工肉など、食育や健康の観点で、こだわりの美味しい給食が提供されています。
今後も、このようなこだわりの品質が守られていくことが望まれます。そして、時代に応じたさらなる改善がなされていってほしいと思います。
そこで食材選定の基準についてですが、日高市は、個々の仕入れ品目ごとの基準は「日高市学校給食物資企画書」として定められていますが、公開はされていません。また品目横断的な、献立や食材選定の指針のようなものは明文化されていません。
そういったものがないと、そのときどきの栄養士の方の価値観による部分が大きくなってしまう、また、食については保護者や子ども達によって様々な嗜好がある中で、何をもって質の改善というのか、議論がしづらくなってしまうのではないでしょうか。
例えば武蔵野市は、質の高い学校給食で全国的にも有名ですが、「武蔵野市学校給食の献立作成及び給食調理の指針」という4ページのガイドラインをつくり、これをバイブルとして、長年かけて少しずつ、地域で力を合わせて給食改善に取り組んできたとのことです。
日高市でも、こういった指針を策定し、公開・共有していく考えはありますでしょうか。
当市では、現在、学校給食で使用する食材の選定にあたっては、平成28年4月に「日高市学校給食物資規格書」を策定しており、これを基準としています。
また、献立作成及び給食調理につきましては、学校給食法に規定している「学校給食の目標」をもとに行っているほか、学校食育主任会議において学校現場の意見を聴いたり、学校給食センター運営委員会で協議をしながら進めていることから、指針の策定については、現在考えておりません。
ご答弁にありました「日高市学校給食物資規格書」は、食材ごとの仕入れ基準となっています。その前提になるような指針を明文化しないのかということをお伺いしたいのですが、学校給食法がそれだというご答弁だったようにも思うのですが、これだけ自治体によって食材の選定基準に差が出ているなかで、日高市も独自にいろいろと決めている現状があるので、給食法が基準というようには、言えないのではないかと思います。
例えば、最近議論になっているものとして、遺伝子組み換え食品や、家畜に投与される抗生物質、また食品添加物については、日高市はどう考えているのでしょうか。
食材選定につきましては、「日高市学校給食物資規格書」を基準と考え、選定しています。遺伝子組み換え食品、食品添加物については、個々の食材の規格に使用しない旨を規定しておりますが、飼料に投与する抗生物質を含めて、使用しない旨を共通規格として規定するか、今後検討したいと考えております。
「共通規格」の策定を検討いただけるとのことで、まさに、そういったものがあると良いと思います。
さらにいうと、それに対しては、現状どのような規格で調達しているかという現状のルールを表現するだけではなくて、「なるべく」といった表現で、今後目指していく目標のような事柄も表せると、給食をより良くしていくための共通の方針になると思います。そのような記載も併せて、検討していかれますでしょうか。
「日高市学校給食物資規格書」の中に、給食をより良くするための事項などを記載するか、今後検討したいと考えております。
(2) 食器洗浄等に使われる洗剤の選定基準は。
食器用洗剤は、子どもの口に入るものですし、また、環境面への配慮も求められるかと思います。
自治体によっては、指定の化学物質は避ける、また石けんに変えるといった取組がなされていますが、日高市では、子ども達の安全や環境保全の観点で、どのようなものが選ばれていますでしょうか。
現在、食器の洗浄は、食器・トレイ浸漬槽と食器・トレイ洗浄機の2段階で行っております。浸漬槽は、洗浄機を使用する前に、食器をふやかし、より効果的に洗浄するために中性洗剤を入れた温水に浸漬するものです。
洗浄機は、中性洗剤では対応できない汚れ、特に油脂やたんぱく質、でんぷんを高圧で洗浄するもので、専用のアルカリ性洗剤を使用しております。
これらの洗剤につきましては、児童生徒が清潔で衛生的な食器を使用できるよう、残留物を確実に洗浄し、食中毒を防止できるものを選定しています。
食器洗浄のプロセスと使われている洗剤について丁寧にご説明いただきました。それで、使われている洗剤の選定基準をお聞きしたいのですが、環境保全や子ども達の安全の観点では、どのようにお考えでしょうか。
洗剤につきましては、児童生徒が清潔で衛生的な食器を使用できるよう、文部科学省の定める「調理場における洗浄・消毒マニュアル」を基準に、洗浄機に適合したものを選定しています。
3番.農業政策との連携について
(1)地産地消の推進の評価基準は。
第6次日高市総合計画および第3期日高市教育振興計画をみると、学校給食における地産地消の推進が掲げられておりますが、その評価指標を見ると、「給食に地場産食材を使用した日の割合」を、令和元年57%だったところを、目標値として令和7年度までに60%にすると書かれています。
この指標は、一食に対して、何か一つでも市内産の農産物が使用されていれば「給食に地場産食材を使用した日」としてカウントするというものですので、例えば1週間に3種の市内産の野菜を使うことになった場合に、それが1日の献立に使われれば20%、1種類ずつ3日に分けて提供されたとしたら、60%ということになります。
つまり、この評価指標では、実際の市内農産物の使用量に関わらず、献立の工夫で簡単に大きく上下してしまうものですので、この数字を、5年間かけて3%増やしていくというこの目標は、実質的な地産地消の目標値としては極めて機能しづらい、推進状況を評価できるものとは言い難いのではないでしょうか。
金額ベースや重量ベースの数値は、仕入れ表があれば、すぐにでも算出できると考えますが、そのようなもう少しリアリティのある指標も含めて評価していく考えはありますでしょうか。
市では、第5次日高市総合計画から「学校給食に地場産の食材を使用した日の割合」を学校教育の成果指標の1つとして掲げることで、JAいるま野を中心とした日高市産野菜や市内事業者の食材をはじめ、埼玉県産の食材を積極的に使用し、地産地消に努めております。
議員ご指摘のとおり、金額ベースや重量ベースという観点もございますが、食材の単位あたりの単価の違い、重量では食材ごとの質量の違いがあるなど一長一短がございます。指標につきましては、今後検討してまいりたいと考えております。
(2)地域の農家や納入事業者との連携の必要性と今後の対策は。
地産地消を現実的に推進していくためには、地域の農家や納入事業者のニーズを具体的に把握し、彼らがより給食に納入しやすいような仕組みを整えていく必要があると思いますが、学校給食センターとして、今後どのような施策が考えられますでしょうか。
市では、日高市産野菜の調達時において、規格(サイズ)や数量の確保が困難な場合もございます。
今後の地産地消を推進するにあたり、市と生産者が連携することで、市からは季節ごとの給食で使用したい食材の種類や量の予定を生産者に伝えたり、生産者側の生産計画を把握するなどにより、収穫状況を予測した献立作成も考えられますので、今後研究してまいりたいと考えております。
↓農業振興についての質問に続く