標題1.行政運営について
日高市役所の組織風土づくりと人材活用について質問いたします。
日本は戦後、中央集権的な行政を見直し、地方分権改革を進めてきました。そして、地方はその地域に根差し、独自の視点で、個性豊かな政策を進めていくという方向にさらに大きく進んでいこうと、2006年、地方分権改革推進法が制定されました。
しかし、制度は整えたものの、それから約20年経った今もなお、地方における地方自治、住民自治の実態を見ると、まだまだ改善すべきところも多いのではないでしょうか。
本来の二元代表制による真の地方自治を実現していくために、私たち議会も、その責任と役割を改めて再認識し、変わっていく必要があると感じています。
同時に、行政の方々にも、長年の上位下達のシステムのなかで醸成されてきた組織風土から、その良い部分と変えていくべき部分を見直し、風土を改善し、市民と力を合わせ、前例にとらわれずチャレンジできる組織に変わっていくような仕組みづくりを、いっそう進めていただきたいと思っております。
市長も、日高市人材育成基本方針の冒頭でも、「常に市民サービスの向上を考え、市民の視点に立ち~、前例にとらわれず~、新しい視点を持って職務に取り組む」必要性をうたわれ、「戦略的な人事管理制度を強化していく」とメッセージされています。
日高市はこれから、学校跡地活用や、地域公共交通計画の策定、こども計画の策定などなど、これからの日高市の将来を左右すると言っても過言ではない、まちのあり方をデザインする、答えのない大きなテーマに取り組もうとしています。
職員の皆さんが、本来の意欲と能力を最大限発揮し、生き生きと創造的な仕事にチャレンジできる環境を、市としても、よりいっそう整えていっていただきたいと思います。
そのような組織をつくるために重要な要素として、昨今の議論では、職場の「心理的安全性」が注目されるようになってきました。心理的に安全なチームとは、「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をすることに力を注げるチーム」と言われています。
当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、逆に、安全でない状況を考えてみると、その重要性に気づかされます。例えば、
思っていることを率直に発言すると、空気を壊してしまうんじゃないか、面倒なことを…と思われてしまうのではないか、仕事を増やしてしまうかもしれない、浅はかなことを言って勉強不足だと思われてしまうのが怖い、周りに迷惑をかけてしまうかもしれない、、、
などの恐れから、自由闊達に発言しづらい空気感がある職場は、心理的安全性が低いと言えます。そのような空気感のチームでは、個々人がなるべく余計なことをせず、目の前の業務をこなし、自分の身を守ることを優先するようになる傾向が指摘されています。
昨今、様々な研究により、この心理的安全性が、生産性の高い組織をつくるための土台であると言われ、管理職向けの研修なども盛んになってきています。
また、日高市行政の存在目的は、言うまでもなく、市民の幸福度を高めることです。そのためには、職員の方々がまず、幸福な気持ちで仕事をしていていただく必要があると考えます。
例えば、「日々の仕事に充実感を感じていますか」「日高市役所を職場として他人に勧めますか」「日高市のビジョンや戦略に共感していますか」「自分の個性と能力が十分に発揮されていますか」など、従業員満足度、幸福度をはかる指標を設定し、それらを高める施策を講じ、評価していくことが、市民が幸せでいられるまちづくりにつながると考えます。
そうして、全国に名前を轟かせる、私たち市民が誇るスーパー公務員さんが、次々と生み出されるような日高市役所となることを願って、以下、質問いたします。
要旨1.組織風土づくりについて
(1)これまで力を入れてきたことは。
「まちづくりは人づくり」を念頭に入れた行政運営を行っていく中で、少子高齢化や社会情勢の変化などにスピード感を持って柔軟に対応できる組織、新たな視点を持ってチャレンジできる組織、経営感覚を持ち長期的視点で考えることができる組織、市民へ丁寧な説明や情報提供を行い市民から信頼される組織、そして活気のある職場づくりに取り組んでまいりました。
これらを実現するための「8つの行政運営理念CIS」に加え、「職員提案制度の推進」、また、現場とのコミュニケーションの機会増加のためコロナ禍以前に実施しておりました「市長の職場訪問」を今年度から開始しました。
「市長の職場訪問」を今年度から開始されたとのことですが、これはどのような取組なのでしょうか。
日々、市民のために尽力している現場職員への激励とコミュニケーションの機会を設けるため、8月中の7日間で、出先機関も含めた41課所等へ市長が直接訪問したものでございます。
(2)具体的な施策とその成果は。
市では、厳しい財政状況が続く中、社会情勢の変化に対応しながら、「明るく元気な日高の実現」を目指し、「市役所を真に市民の役に立つ場所」とするため、平成20年度から、風土改革を開始しました。
具体的には、「チャレンジ」「チェック」「コストダウン」「コミュニケーション」の頭文字の「C」を取り、「4つのCによる風土改革」とし、課所ごとに目標を設定し、取組結果が優れていている課所を表彰するものです。
平成25年度から3年間、時代に即したスピード感ある対応を目指すため、個人の行動改革として「カイゼン」行動の推奨と優れた職員への表彰を実施しました。
平成26年度には、市民から信頼される職員を目指すため、「4つのCによる風土改革」に、身だしなみや態度、法令順守、環境配慮の視点として「クリーン」を新たに加え、「5C」とし、位置付けを「行政運営理念」といたしました。
更に、ICTを活用して業務のスピードアップを図るとともに、多角的な視点で想像力を働かせ、将来都市像実現を目指すため、令和2年度から「クリエイティブ」「イマジネーション」「スピード」の3つの要素を更に加え、頭文字から「8つの行政運営理念CIS」とし、常に意識して仕事を行うため、各職場で掲示をしております。
令和3年度には、第6次日高市総合計画前期基本計画策定に合わせ、計画上の重要な要素である「SDGs」の視点を「8つの行政運営理念CIS」に取り入れ、課所目標を設定し、毎年度、優れた課所を表彰しております。
また、もう1つの取組として「職員提案制度」があります。
職員提案は、職員が職位、職種にとらわれず、事務についての提案を行うことを奨励し、提案内容を市政に生かすとともに、職員の意識改革、政策形成能力、事務能率及び市民サービスの向上を目的とするものでございます。
令和4年度につきましては、職員が随時に提案できる従来の方式に加え、「ペーパーレス化の推進」を課題設定した上で提案を募集する方式も実施いたしました。
随時提案による方式が2件、課題設定による方式で8件の応募があり、うち7件を採用しております。
この制度においても提案内容が採用された職員を表彰しております。
(3)前例のないことにも挑戦しようとする職員の意識をつくる方法は。
日高市はいま、働き方改革を進めていますが、働く時間を削減しようという方向性と同時に、前例のないことにも挑戦しようとする職員の意識をつくる方法について、どのように考えられていますでしょうか。
働き方改革は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、育児や介護との両立など、働く側のニーズの多様化といった課題を受け、令和元年4月1日から関連法の改正により、国が提唱したものでございます。
地方自治体も同様に、多様なワーク・ライフ・バランスを実現できるよう、時間外労働の上限規制の導入や年次有給休暇の取得促進などを進めております。
今年の人事院勧告では、国家公務員の週休3日制も選択できるようフレックスタイム制の拡大が勧告されました。
公務員を取り巻く労働環境が変化を見せていく一方、業務量も年々増加の一途をたどっております。
そのため、更なる事務の効率化を図るためにも、また、新しいことにチャレンジできる時間とゆとりを持つためにも、DX(デジタルトランスフォーメーション)の更なる推進・強化を図ってまいりたいと考えております。
(4)日高市の職場の心理的安全性に対する見解と、さらなる改善の方向性は。
職場の心理的な安全性とは、組織の中で自分の考えを誰に対してでも安心して発言できる状態とされ、安全性が高い場合は、コミュニケーション量が増え、生産性の向上にもつながると一般的に解されております。
しかし、心理的な安全面のみだけでは十分ではなく、組織の目的共有、組織への貢献度、仕事のやりがいなどといった要素も重要であると考えております。
職場内でのコミュニケーションの強化、課所目標の設定など、引き続き「8つの行政運営理念CIS」の取組を強化し、継続実施してまいりたいと思います。
今後の改善の方向性として、CISを強化し、継続実施していくとのご答弁でした。
このCISの取組みは、毎年度、課ごとに目標を設定し、その実践をもって行政運営理念の浸透をはかるというものと理解しております。
そこで、どのような目標が設定されているかを見てみると、たとえば今年度の各課の目標がHPに公開されていますが、これ上から見ていきますと、
年間5冊以上、業務関連書籍を読む、
健幸ポイント事業に参加して自身の健幸増進に取り組む、
ノー残業デーに定時退職する、
市の所有地のゴミ拾いをする・・・
などなど、いま、地方自治体に求められているような風土改革が進むような目標になっているかというと、どうでしょうか。行政運営理念の浸透ということを目的にするのであれば、もう少し、そのようなというか、ストレッチ効果のある目標になるよう目標設定の仕方を考えるか、そもそも課ごとの目標設定が適切なのかなど、運用を見直していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
CISの取組みにつきましては、「チャレンジ」「チェック」「コストダウン」「コミュニケーション」「クリーン」「クリエイティブ」「イマジネーション」「スピード」の8つの要素に、第6次日高市総合計画前期基本計画上の重要な要素である「SDGs」の視点を取り入れ、各課所が主体的に項目を選定し、目標設定をしております。
また、1つの目標に向けて組織の結束を高めるため、行政運営理念「CIS」とともに課所目標を職場に掲示しております。
CISの運用の見直しにつきましては、先ほどご答弁いたしましたとおり、時代に即して改善してきており、今後、改善の必要性が生じた場合は、適宜、見直してまいりたいと考えております。
いまご答弁にありましたように、CISはその項目が8個もあります。この8個を浸透させていくという方針では、なかなか課題感が見えづらいと感じますが、例えばこの中で、今、日高市として特に注力しいていく必要があると考えておられる項目はありますでしょうか。
「8つの行政運営理念CIS」のいずれの項目も重要ですが、その中でも「スピード」は特に重要な項目であると考えております。
新型コロナウイルス感染症への早急な対応、そして、資源価格の上昇や円安の進行による物価高騰など、社会の変化に迅速に対応できる行政運営が必要となっています。
職員の多様なワーク・ライフ・バランスを維持しつつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)による事務の効率化を進めるなど、行政運営のスピードを更に上げることが住民サービスの向上につながるものと考えております。
行政運営のスピードアップをいま最も重視されているとのことですが、行政が民間と比して遅くなる最たる要因とされているのがPDCAサイクル、すなわち、3年5年という長期計画に対する見直しのかけづらさや、そのなかで年度予算も策定から実行、成果評価に2年以上かかるというライフサイクルの長さにあると言われています。
そこで近年、迅速な意思決定を行っていく手法として様々な自治体が導入を始めているのが、OODAループです。
それによって、5年間等の長期の計画を、年次で見直しながら進めることを可能にしたり、年度途中で事業の見直しを入れることで補正予算のハードルを下げたりと、短期間で柔軟に事業内容を改善していけるようにしようという枠組みです。
このように、仕組みを変えることで、働き方、組織風土にも良い影響を与えていくことが考えられますし、まさにDXや、これから始める交通政策の検討にも適したものと考えます。
こういった一部事業へのOODAループの導入は検討されていますでしょうか。
PDCA サイクルとは、「Plan(計画)」「 Do(実行)」「 Check(評価)」「 Action(改善)」という一連のプロセスを繰り返し行うことで、改善や効率化を図る「総合計画の進捗管理の手法」として、一般的に自治体に導入されております。
一方、議員ご提案の「OODA(ウーダ)」につきましては、「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」の頭文字を取ったもので、アメリカ空軍が提唱し、ビジネスの世界で取り入れられつつある意思決定の考え方であると認識しております。
目的や手法が異なるため比較することは難しいですが、行政運営のスピードアップのために「OODA(ウーダ)」導入の必要性が生じた場合は、検討してまいりたいと考えております。
市長にお伺いします。
スピードをいま最も重視されており、DXによる事務の効率化を進めて行かれるとのことで、
実際、日高市役所はいま、DXに力を入れられており、先日行われた総務省地域情報化アドバイザーによる研修も、職員全員が受講されたとのことで、そんな自治体はなかなかないというお話も伺いました。
当該研修では、DXの推進ポイントとして、ワガママを排除せず、また「当たり前」に疑問を持つこと、課題や不満や疑問を隠さず出していくことが、特に重要であるとされていました。まさに、DXを推進する組織には、心理的安全性が土台として必要というお話だったと理解しています。
また、DXが進むことで、職員がより一層、AIには出来ない創造的な仕事に集中することができるようになるわけですけれども、その効果を高めるためには、いま以上に、前例のないことに挑戦していける組織風土づくりが大切になると考えます。
そのような風土づくりについて、いま、先ほどのご答弁にもあった「市長の職場訪問」なども経て、市長がいま、お感じになっていること、これから特に取り組んでいくべきと感じられていることは何でしょうか。
職場訪問では、出先機関の職員とも直接話すことができ、今回、現場の状況や声を聴く良い機会であったと考えております。また、職場での激励が、職員のモチベーションアッブにつながればと思っております。
ご質問いただきましたとおり、DX(デジタルトランスフォーメーション)につきましては、今年度から専門の担当を配置するなど、力を入れて取り組んでいるところでございます。
具体的な成果につきましては、まだまだこれからとなりますが、スピード感をもって事務を進め、住民サービスの向上が図れるようにしていきたいと考えております。
そして、CISのすべての要素を発揮し、小さなことでも市民のためになることを現場から提案し、失敗を恐れず新たなことにもチャレンジし、また、心身とも職員が元気で生き生きと活躍できる活気ある職場となるよう取り組んでまいりたいと考えております。
要旨2.人材の活用について
(1)職員の職員満足度や幸福度の重要性は。
職員の仕事における満足度は、職員個々のやる気、モチベーションに大きく影響すると考えております。職員個々の満足度が高い職場であれば、職場内が活性化し、市民サービスの向上、効率的な行政運営に繋がると考えております。また、人材確保という点からも、優秀な人材の確保や人材流出防止に繋がると考えております。以上のことから、職員満足度は、重要であると考えております。
(2)現状の職員満足度についての見解は。
また、平成30年度に実施した人事評価制度に関する職員アンケートの調査結果では、「適正な評価を受けた」という回答が85%と一番多い結果でございました。
これらの調査結果を踏まえますと、仕事に対する職員満足度は高いと考えております。
また、職員満足度を向上させるためには、ワークライフバランスの推進も重要であることから、仕事と生活両面からのバランスも考慮しながら満足度を向上させていきたいと考えております。
(3)意欲と能力のある職員が正当に評価されているか。
毎年度、4月1日から翌年3月31日の評価期間におきまして、能力評価を2回、業績評価を1回実施しております。これらの人事評価は、任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用するほか、職員の人材育成にも活用しております。能力評価では、職位に応じて求められる能力の評価要素に比重を置くことで、職位に応じた評価を実施しております。
平成30年度に実施した人事評価制度に関するアンケートの調査結果では、適正な評価を受けた割合が多いことから、職員に対する評価は妥当と考えております。
しかしながら、正当な評価をするためには評価者と被評価者の良好なコミュニケーションが重要となりますので、引き続き良好な職場環境の維持に努めてまいります。
(4)360度評価の導入は。
上司から部下、だけでなく、部下から上司、または同僚同士などで評価をし合う、多面評価、すなわち360度評価の導入について、検討されていますでしょうか。
360度評価制度の導入につきましては、令和4年度に国家公務員の働き方改革を検討する若手官僚チームが人事院に提言をしておりますので、今後、国や県、近隣団体等の状況を注視し、多面評価について研究してまいります。
(5)職員満足度に関する調査と経年評価をする考えは。
総合計画策定に係る職員アンケートをはじめ、人材育成基本方針策定時の職員意識調査など、それぞれの目的ごとに意識調査を実施しておりますことから、今後も必要に応じて、職員満足度の向上を目指し、実態の把握に努めてまいります。
最後に1点、要旨2人材の活用についての(5)従業員満足度の調査について、再質問いたします。
職員満足度を上げるための職員意識調査を継続的に実施されるとのご答弁でしたが、次の実施時期はいつ頃になりますでしょうか。
次の職員意識調査の実施時期についてでございますが、第6次日高市総合計画後期基本計画の策定時期に合わせて実施してまいりたいと考えています。