9月議会では、議員提出議案として1件、「改正マイナンバー法を見直し、健康保険証の継続を求める意見書」案が出されました。
私は採決では「退席」(=採決を放棄)いたしました。理由は3点です。
- 私は国政の対立には関与せず、日高市のことに注力する立場の議員であること。
これを大きくうたって選挙でも投票いただいたので、これは今後も貫くべきと思っています。(→詳細はこちら) - 意見書の内容が、具体的な改善点の指摘なく、ただ国の事務事業を全否定しているのみであり、市議会の役割を逸脱しているとも考えられ、かつそのような内容で提出することの意味が感じられないので、この議論に参加したくないと考えたこと。
- この種の議案が、地方議会にもたらす問題点(後述)から、そもそもこのような議案を歓迎しないこと。
また、議案を提出する前に、賛同者を募る会派代表者会議にかけられるのですが、提案者から、事前の説明も、当該会議での説明も一切なかったので、当然のように賛同会派が1会派もないという冷めた状況で、
それでも議案として提出されると聞いたとき、申し訳ないですが、正直、議案の提出が目的のように感じられ、説得や調整の努力なく、ただ賛否を突きつけ、否決という結果を得る、という提案のあり方に、疑問を感じました。
そういう議案に議会の時間が使われることに、なんだかなー、と思っていました。
マイナンバー法やマイナ保険証の推進については色々問題もあると思います。
市民生活に大きな影響を与えるこの重要事案について、私たち地方議員もアンテナを張っておくこと、国に意見することはとても大切だと思います。
しかしながら、議会の会期中という、1分でも多く日高市の事案に注力したいというこの期間に、この問題を論じるための調査研究に膨大な時間を使うことが、日高市議会議員の務めだとはとても思えず、市民が望んでいることとも思えず、
私は、早々にこの議論には参加しない(本意見書自体の意味や効果が薄いので、結果はどちらでも構わない)という立場に立ち、採決でも退席としました。
改正マイナンバー法を見直し、健康保険証の継続を求める意見書
政府は、令和6年秋にマイナンバーカードと健康保険証を一体化させ、現行の健康保険証を廃止しようとしている。しかし、マイナンバーカードの取得は任意である上、高齢者や病気、障がいのある方など申請や更新が困難な方もいる。また、マイナンバーカード健康保険証によるオンライン資格確認や通信エラー等のトラブルも未だに全貌が明らかになっておらず、7月14日から16日に実施された共同通信の世論調査では、健康保険証を廃止する政府方針に関し、延期や撤回を求める声が76.6%にも上っている。
資格確認書の発行についても、政府の説明が二転三転し、市民のみならず、迅速な発行を求められる自治体職員、現場で取り扱う医療機関等の理解が得られているとは言えない。政府は、健康保険証廃止を前提とするのではなく、いったん立ち止まって制度の見直しをはかり、国民の信頼回復に努めるべきである。
よって、国会及び政府においては、今後も誰もが等しく安定的な医療サービスを受けられるよう、改正マイナンバー法を見直し、現行の健康保険証を継続することを強く求める。
この議案のみならず、多くの地方議会で、このような、国政に対する意見書案が提出され、残念ながら国政の事案は市の事柄よりも市民の関心が高い傾向にもあり、結果として多くの時間が費やされるということが起きています。
私は、その多くの議案が、今回のように論点が絞られないままかみ合わない議論となり、地方議会を疲弊させ、無用な分断を生み、まちづくりの阻害要因となっていることを憂慮しています。
その立場から、提案者に対する議案質疑では、以下の質疑をさせていただきました。
なお、田中議員のご答弁については、私が記憶で書いてしまうと、ご本人の意図とニュアンスがズレてしまってはいけないので、記載は避けたいと思います。日高市議会のHPに録画が公開されましたら観ていただければ幸いです。
議案質疑の内容
始めに、質疑の前提として私の考えを述べさせていただきます。
まず、地方議会の役割について、日高市議会基本条例には、日高市議会の役割は「市政執行に対する監視及び評価並びに市政への政策提言を行うこと」と書かれています。
あくまで「市政執行」に対するのが我々日高市議会の役割であり、国の事務事業を評価する役割にはありません※。従って当然、それに必要な調査権等の権限も地方議会にはありません。
(※地方自治法99条にて国に意見書を提出する「権利」は認められています。ただし、あくまで「当該普通地方公共団体の公益に関する事件」についてとされています。)
つまり、地方議員は議員だからといって、国の事務事業について特別詳しいとか、情報があるとか、そういったことは基本的にないのが実情です。
もちろん、我々地方議員が、国政に対して市民としての当事者意識を持ち、常に注視しながら、地方として国に提案※していくことはとても重要です。
(※総務省も「提案募集型地方分権改革」を進めています)
また、市民に身近な存在である地方議員だからこそ、市民として、市民と一緒に学び、考えていくことは大切だと思います。
しかしながら、国で進めている事務事業について、地方議会でたびたび取り上げて議論することは、地方議会の本来の役割を疎かにし、また、地方の行政課題とは直接関係のないところで、議員同士や市民の分断を促すことなど、まちづくりの阻害要因となることも、現実問題として起こっていると、これまでの議員活動を通じて、強く感じるようになってきました。
以上の問題意識から、この議案の意義について、4点、質疑いたします。
(1)地方議会の本来の役割について
地方議会の本来の仕事についてです。
国の事務事業の評価を地方議員としてするのは大変なことです。
今回意見書が出たことで、多くの議員は、大変な、とても大変な時間を使って各自にできる調査活動をしました。
一方、この9月議会は、決算もあり、改選後、初めての事業評価に取り組んできましたが、本意見書の問題にずいぶん時間を弄したことから、決算等の議案の審議にもっと集中したかった、もっと市の政策をねる時間に使いたかった、という声も少なからず聴いています。
このように、本来の私たちの仕事を置き去りにして、国の事務事業について、時間を費やしていることに、違和感を禁じ得ないのですが、これがあるべき状況なのでしょうか。お考えをお聞かせください。
(2)地方議員の本来の評価について
このような議案の存在により、私たち地方議員に対する、市民からの評価もまた、ゆがんでしまうことを憂慮しています。
私たち地方議員の働きは、地方議員本来の役割において評価されるべきです。
特に、無所属の議員のなかには、私自身もそうですが、そもそも国政に対する意見や姿勢に関係なく、本来の働きを見て市民に評価いただきたい、また、すべての市民にとって相談しやすい立場でありたいという考えのもとに活動している議員もいます。
一方、このような、具体的な論点のない、単に、国の現行事業への賛否だけを問うような意見書で採決をとることで市民に伝わるのは、単なるイメージとしての「マイナ保険証推進派・反対派」という印象のみとなることが想像されます。
そのような色分けは、地方議員が正当に評価されづらい状況をつくることに繋がり、つまりは、地方議員が本来の仕事に注力しづらい状況になると懸念しています。
この点について、お考えをお聞かせください。
(3)意見書の効果について
本意見書を提出する効果性について伺います。
国の事務事業を評価する立場にない地方議会において、このように論点や具体的な提案なく、事業そのものをただ否定するような意見書を議決することが、どれだけの重みを持って国政に反映されるのか、想像するにあまり発言力を持たないように思えて仕方ありません。
この意見書が提出されることにより、具体的にどのような効果があるとお考えでしょうか。
(4)当該テーマの必然性について
そもそもなぜ今この意見書なのか、伺いたいと思います。
この種の議案の意義について懐疑的な立場で質疑しましたが、完全に否定したいわけではありません。
この様な意見書をきっかけに、我々地方議員も、市民として、市民と一緒に国の問題を考えることは貴重な機会と考えますし、
国会という権力の深刻な暴走があれば、市民とともに声をあげられる存在でありたいと思います。
しかし、市民と一緒に国に働きかける手段は、地方議会からの意見書だけではなく、様々な方法があります。
それでもなお、国の事務事業を議案として取り上げるからには、その意義が十分にあるものに厳選されてほしいと考えます。
時間という限られた資源をどう効果的に使うかという視点こそ、市の事業の費用対効果を評価する立場にある我々議員にとって、とても必要とされる視点ではないでしょうか。
昨今、日本社会における問題は山積しており、様々な理由で深刻な問題を抱えている人、支援が、いま支援が必要な方はたくさんいます。
私もイチ市民として、待ったなしと感じている国家的な問題は多くあります。
そのなかで、いま、日高市議会でこの問題を提起する理由は何でしょうか。
紙の保険証廃止という単一の問題の重要性ではなく、問題の優先順位の観点でお答えをお願いします。
終わりに
以上、議案に対する質疑としては相応しくない質疑もあったと思います。
意見書は大事だ、というご批判もあると思います。
しかしながら、それらも覚悟のうえ、あえて質疑したのは、私の問題意識を議場で述べることで、今後、少しでも建設的な議会になることに資することができたらという気持ちからです。
繰り返しますが、国政に意見書を提出することを一切を否定するものではありません。
ただ、日高市議会はあくまで、日高市の観点で国に意見・進言・提案するのが役割であり、今回のように、日高市としての見識もなく、ただ国の事務事業そのものを否定することは、自治法に定められた役割を逸脱していると考えます。
何より、事前の説明も交渉もなく、反対されることを前提に議案を出すというやり方が、建設的な議会、より良い日高市をつくることに繋がるとはとても思えません。
このような議案により、地方議会の機能に弊害も起きているということ、この議案が今回実際に日高市にもたらしたものが何かということを、市民の方も含め一度考えてみていただきたいと、議会のリアルな現場から、このたび問題提起をさせていただきました。
9月議会、もっともっと進めたいことがありました。私個人としては、無念で仕方がありません。
私は、日高市議会がもっと働いて、日高市行政をもっと良くしていくことで、皆さんから期待され注目される議会にしていくことが、
議員1人ひとりのレベルを引き上げ、ひいては県や国に対しても、実効的な働きかけのできる成熟した議会に育てていくことになると考えます。
これからも、日高から社会を変える、を目指して頑張って参ります。